近年、抗体医薬、とりわけ抗体薬物複合体ADC(Antibody-Drug Conjugates)の開発が加速しています。その開発の過程で求められるツールのひとつに、検出用の抗体があります。抗体職人は、その技術的な特性から、Payload特異的な抗体、抗原と結合した状態の抗体を認識する抗イディオタイプ抗体など、ユニークな特異性を持った抗体の作製が可能です。
ここでは、異なる3種類の結合モードおよび特性を有する抗イディオタイプ抗体作製についてご紹介します。
1.抗イディオタイプ抗体の結合モードと特性
抗体職人のモノクローナル抗体作製サービスは、動物に依存しない独自の抗体作製技術であるHuCAL®テクノロジー(ヒトFab抗体ライブラリとファージディスプレイ)を用いているため、抗体セレクション方法を戦略的にデザインすることで、以下の異なる結合モードおよび特性を有する抗イディオタイプ抗体を取得することが可能です。
Type 1(阻害抗体)
最もベーシックな抗イディオタイプ抗体です。阻害抗体であり、細胞ベースのアッセイやELISAにも最適です。
- 抗イディオタイプ抗体
- パラトープ特異的
- ターゲット抗体とその抗原の結合を抑制(結合阻害性)
- 中和抗体
- 遊離のターゲット抗体の検出
Type 2(非阻害抗体)
ターゲット抗体の抗原結合部位の外側のイディオトープに結合し、サンプル中の遊離抗体と結合抗体の両方を検出することができます。
- 抗イディオタイプ抗体
- パラトープ特異的ではない
- 結合阻害性はない
- ターゲット抗体の総薬物量の検出(遊離、部分的に抗原と結合、完全に抗原と結合)
Type 3(複合体特異的抗体)
遊離のターゲット抗体ではなく、抗原と結合したターゲット抗体を排他的に検出することができるユニークな特性を持った抗体です。
- ターゲット抗体とその抗原の複合体特異的抗体
- 結合阻害性はない
- 抗原と結合したターゲット抗体のみを排他的に検出
2. 抗イディオタイプ抗体の作製実績
抗体職人のモノクローナル抗体作製サービスは、HuCAL®テクノロジーを使用して、お客様の個々の抗原や要件に合わせたカスタムモノクローナル抗体を作製してきた15年以上の経験と実績があります。
HuCALテクノロジーを用いて作製されたレディーメイドの抗イディオタイプ抗体については、こちらをご覧ください。
3. 特異性の高い抗イディオタイプ抗体の作製
3-1. ブロッカー存在下でのセレクション
抗イディオタイプ抗体の抗体セレクションでは、イディオトープ特異性を確保するために、ターゲット抗体と同じアイソタイプとサブクラスの抗体をブロッカーとして用いることが特徴です。ブロッカー存在下でターゲット抗体に対して抗体セレクションを行うことにより、ターゲット抗体のイディオトープ以外の領域に結合する抗体の濃縮を回避することができます。
3-2. ヒト血清の存在下でのセレクション
ヒト血清の存在下で抗体セレクションを行うことで、前臨床および臨床サンプルの評価アッセイにおけるマトリックス効果を回避することができます。
4. 抗イディオタイプ抗体とは
抗イディオタイプ抗体とは、抗原結合部位を含む抗体に固有の可変領域(イディオタイプ: Idiotype)内のエピトープ(イディオトープ: Idiotope)に結合する抗体のことです。イディオトープの組み合わせは各抗体に固有であるため、抗イディオタイプ抗体は、1つのモノクローナル抗体に特異的に結合するように作製することができます。
抗体医薬品の開発では、生体内でADA(抗薬物抗体: Anti-drug antibodies)が誘発されると、薬物の有効性が低下したり、副作用を引き起こしたりする可能性があるため、薬物分子の免疫原性を評価し、前臨床および臨床研究においてADA応答を効果的に評価できるアッセイ系が必要となります。抗イディオタイプ抗体はADAと機能的に一致しており、ADAアッセイのポジティブコントロールとして使用することができます。また、抗イディオタイプ抗体はターゲット抗体のイディオトープを特異的に認識し、血中に含まれる多量の自然抗体と確実に識別することができるので、抗体医薬品の薬物動態(PK)や薬力学(PD)の試験にも広く活用することができます。
5.まとめ
抗体職人の抗体作製サービスは、特異性を指定した抗イディオタイプ抗体の作製が可能です。このような異なるタイプの抗イディオタイプ抗体を組み合わせて使用することで、抗体医薬品の開発におけるアッセイの柔軟性や応用性をより高めることができます。また、完全にin vitroのプロセスで作製されるため、親和性向上やさまざまなフォーマットへの変換など、お客様のご要望に合わせた様々なオプションのご相談も承ります。