タンパク質合成について
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Q1:ヒト由来のタンパク質など大腸菌以外のタンパク質も合成できますか?
PUREfrex®は、大腸菌由来の翻訳系を再構成したタンパク質合成系ですが、哺乳類、植物などの高等真核生物由来のタンパク質も合成できます。ただし、GC含量、マイナーコドンの出現頻度などの核酸の配列により、タンパク質合成効率が低くなる傾向があります。様々なタンパク質を合成した例もありますので、こちらも参照ください。
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Q2:PUREfrex®でのタンパク質の合成量は?
合成するタンパク質に依存しますが、例えば、キットに付属のコントロール鋳型DNAであるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)は、PUREfrex®1.0の場合、反応液1mLあたり約150μg、PUREfrex®2.0の場合、反応液1mLあたり約600μg、合成できます。
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Q3:PUREfrex®で合成できるタンパク質の分子量は?
数残基のペプチドから、約100kDaの分子量のタンパク質も合成できます。β-Galactosidaseを合成した例もございますので、こちらも参照ください。
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Q4:推奨反応温度と反応時間は?
37℃で2~4時間の反応を推奨しています。
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Q5:タグを付加させたタンパク質は合成・精製可能ですか?
PUREfrex® に含まれる全てのタンパク質には、精製・検出用のタグは付加されていません。そのため、ヒスチジンタグ(His tag)を含む全てのタグ配列が使用可能です。例えば、His tagを付加した DHFR を PUREfrex® で合成後、金属アフィニティ樹脂で精製した例もございますので、こちらもご覧ください。
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Q6:合成されたタンパク質は、糖鎖修飾やリン酸化などの翻訳後修飾はされますか?
PUREfrex®は翻訳に必要な因子のみを再構成したタンパク質合成系のため、リン酸化などの翻訳後修飾はされません。
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Q7:分子シャペロンは含んでいますか?
PUREfrex®は翻訳に必要な因子のみを再構成したタンパク質合成系のため、Hsp70やHsp60などの分子シャペロンは含みません。ジーンフロンティアでは、PUREfrex®でのタンパク質合成時に添加してお使い頂ける、分子シャペロンも発売しております。分子シャペロンの製品と利用例に関しては、こちらをご覧ください。
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Q8:ジスルフィド結合を有するタンパク質を合成できますか?
タンパク質の活性にジスルフィド結合が必要な場合には、PUREfrex®1.0あるいはPUREfrex®2.0に添加剤のDS supplement(製品番号 PF005-0.5)を添加してお使いください。SS結合が複数個所存在するタンパク質の合成例に関しては、こちらのポスターもご覧ください。
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Q9:膜タンパク質は合成できますか?
膜タンパク質も合成はできますが、ほとんどの場合、合成された膜タンパク質は凝集します。PUREfrex®反応液に、リポソームなどの脂質成分を添加して膜タンパク質を合成することにより、脂質成分に組み込まれた膜タンパク質を合成できる場合があります。
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Q10:[35S]メチオニンや[3H]ロイシンなど放射性同位体で標識されたタンパク質を合成出来ますか。
[35S]メチオニンや[3H]ロイシンなどの放射性同位体を含むアミノ酸を合成反応液に添加して合成することにより、放射性同位体で標識されたタンパク質を合成できます。なお、PUREfrex®1.0には、20種類の天然アミノ酸が、それぞれ終濃度で0.5 mMとなるように含まれています。
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Q11:T7プロモーター以外のプロモーターは使用できますか?
PUREfrex®の反応液には、転写酵素としてT7 RNAポリメラーゼが含まれていますので、T7プロモーターを付加した鋳型DNAの使用を推奨しています。他のプロモーターを使用する場合は、そのプロモーターに対応したRNAポリメラーゼを添加して反応してください。
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Q12:ポジティブコントロールのDHFRが合成されない場合の原因は?
PUREfrex®の反応液は、反応チューブを直接加温するヒートブロック又はウォーターバスで反応させてください。気相の恒温槽(培養用恒温器など)で反応すると、反応液の温度の上昇に時間がかかり、合成量が低くなります。
キットの構成成分が失活している可能性があります。失活を防ぐために、キットは適切な温度で保存してください。また、溶液を分注することにより、凍結融解の繰り返しはできるだけ避けてください。
ヌクレアーゼが混入している可能性があります。ヌクレアーゼの混入を防ぐためには、ヌクレアーゼフリーのチューブ、チップ、試薬を用い、手袋やマスクを着用して実験を行なってください。
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Q13:DHFRは合成されるが,目的のタンパク質が合成されない、または合成量が低い場合の原因は?
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キットの構成成分が失活している可能性があります。失活を防ぐために、キットは適切な温度で保存してください。また、使用後、残りの反応液を保存する場合は、凍結融解の繰り返しを避けるために、溶液を分注してください。
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ヌクレアーゼが混入している可能性があります。ヌクレアーゼの混入を防ぐためには、ヌクレアーゼフリーのチューブ、チップ、試薬を用い、手袋やマスクを着用して実験を行なってください。プラスミド DNA の精製に用いるキットの種類によっては、精製 DNA に、RNase が混入してくる場合がありますのでご注意ください。詳しくは、こちらをご覧ください。
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鋳型 DNA の配列が適切ではない可能性があります。PUREfrex® で使用する鋳型 DNA には、T7 プロモーター、リボソーム結合部位(SD 配列)、開始コドン、終止コドンが必要です。また、転写産物が二次構造を形成して翻訳反応を阻害する場合があります。鋳型 DNA の設計に関する詳細は、こちらをご覧ください。
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Q14:タンパク質合成に影響を及ぼすファクターはありますか?
<pHの影響について>
PUREfrex® 1.0 の反応液は、pHが7.5付近になるようにバッファーが添加されています。そのため、酸やアルカリを添加される場合には、反応液のpHが中性付近になるように調整してください。<カリウムイオンの影響について>
PUREfrex® 1.0 の反応液中の終濃度が10-20mMの範囲でしたら、タンパク質の合成量に影響はありません。<マグネシウムイオンの影響について>
PUREfrex® 1.0 反応液中の終濃度が数mM程度でしたら、タンパク質の合成量にあまり影響はありません。<EDTAなどのキレート剤の影響について>
PUREfrex® 1.0 反応液へのキレート剤の添加によるマグネシウムイオンの減少は、タンパク質の合成量に非常に影響を与えてしまうため、できるだけご使用を避けてください。<その他の2価カチオンの影響について>
PUREfrex® 1.0 反応液中の終濃度が10mM以上になると、タンパク質の合成量が減少する場合が多いため、できるだけご使用を避けてください。<DMSOの影響について>
PUREfrex® 1.0 反応液中の終濃度が数%程度でしたら、タンパク質の合成量に影響はありません。<グリセロールの影響について>
PUREfrex® 1.0 は、終濃度1.5%のグリセロール存在下でタンパク質の合成が行われています。グリセロールを添加される場合、反応液中の終濃度が5%以下であればタンパク質の合成量にほとんど影響はありませんが、高濃度のグリセロールはタンパク質の合成を阻害します。