鋳型DNAについて

タンパク質合成は、PUREfrex® キットのSolution I、II、IIIを混合した反応液に、鋳型DNAを添加し、転写・翻訳反応を同時に行います。そのため、最初にPUREfrex®での合成に適した鋳型DNAの作製が必要になります。PUREfrex®でタンパク質を合成する際に必要な目的タンパク質の鋳型DNAは、お客様ご自身でご用意ください。

鋳型DNA設計のサポート

弊社で開発した遺伝子解析ソフトを用いて、お客様のアミノ酸配列から、PUREfrex® に適した遺伝子配列をお返しするサービスが無料でご利用頂けます。

解析ソフトの概要

  • 愛媛大学大学院理工学研究科の高井和幸教授が開発されたアルゴリズムで、ORF全体のコドンを割り当てています。
    (参考文献:Takai K (2016) Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids, vol.35, p.223-232.
  • N末端のコドンは、ATリッチコドンを採用しています。
  • 翻訳反応を阻害する配列(フレームシフトを誘発する配列など)を除去しています。

鋳型DNA設計のサポート

本サポートのご利用にあたり、以下の内容をご確認ください。

  • 本サポートで提示する遺伝子配列情報は、弊社が推奨する5′ UTRの配列(T7PRO-SD primerの配列)に対し、適していると予測する配列であり、PUREfrexキットでのタンパク質合成を保証するものではありません。
  • ご提供頂いたアミノ酸配列の情報は、遺伝子最適化の情報処理にのみ使用し、それ以外の目的では一切使用しません。
  • 配列情報の処理に使用する解析ソフトは、予告なくアップデートすることがあります。アップデートの前後で、同じアミノ酸配列に対し、異なる遺伝子配列が得られる可能性があることを予めご了承ください。


アミノ酸の入力フォームはこちらになります。

鋳型DNAの概要

PUREfrex®用の鋳型DNAは、下記に記載する最低限必要な配列を含むDNAであれば、環状DNAおよび直鎖DNA(PCR産物や環状DNAを制限酵素処理したDNAなどが含まれます)のどちらも使用できます。また、mRNAをPUREfrex®に添加してタンパク質合成を行うこともできます。

遺伝子の上流について

鋳型DNAには、目的タンパク質をコードする遺伝子の上流に、T7プロモーター配列リボソーム結合部位(SD配列)が最低限必要です(図4)。

遺伝子の終止コドンについて

PUREfrex®に含まれる翻訳終結因子(解離因子)は、3種類存在する終止コドン(UAA(オーカー)、UAG(アンバー)、UGA(オパール))の全てに対応しているため、目的タンパク質をコードする遺伝子の終止コドンは、いずれも使用できます。

遺伝子の下流について

直鎖状DNAを使用する場合
目的タンパク質をコードする遺伝子の終止コドンの下流に10塩基以上の塩基を付加してください。付加する塩基配列の例は、「PCRで使用するプライマーの配列例」をご参照ください。直鎖DNAの場合は、終止コドンの下流にT7ターミネーター配列は必ずしも必要ではありません。

環状DNAを使用する場合
目的タンパク質をコードする遺伝子の下流に、転写を終結させるT7ターミネーター配列が必要です。

DNAを溶解する際等の注意点

TEバッファーに含まれるEDTAは、転写・翻訳反応に必須なマグネシウムイオンをキレートするため、タンパク質合成反応を阻害してタンパク質合成量を下げることがあります。DNAを溶解する際には、EDTAを含まないバッファーやミリQ水などを使用することをおすすめします。また、RNaseが混入すると、合成反応液中の転写産物などのRNAが分解されるため、PUREfrex®を使用する際には、ヌクレアーゼフリーの水、試薬、器具類を使用し、手袋やマスクの着用をおすすめします。

鋳型DNAの設計

鋳型DNAの設計は、PUREfrex®でのタンパク質合成にとって、とても重要な工程になります。「鋳型DNA設計のサポート」もご利用ください。鋳型DNAの配列を設計する場合に、重要なポイントが3つあります。

ORFについて

  • 大腸菌のコドン使用頻度に基づいたコドンを使用する
  • フレームシフトを生じる配列(X/XXY/YYZ)を除く

遺伝子のN末端について

  • ATリッチコドンを使用する
  • 開始メチオニン直後のプロリンやグリシンはできるだけ避ける

遺伝子の上流(5’ UTR)について

  • SD配列(リボソーム結合配列)を含む
  • SD配列上流のATリッチ配列を15塩基以上含む

鋳型DNAの配列に関する注意点

鋳型DNAの塩基配列やアミノ酸配列が原因で、合成されるタンパク質の量が低下することがあり、原因となる配列を最適化することで、タンパク質の合成量が改善されることがあります。

ジーンフロンティアでは、鋳型DNAに関する研究を継続的に行っています。これまでに得られた知見をまとめたこちらのサイト「鋳型DNAの配列に関する注意点」もご覧ください。

使用する鋳型DNAについて

PCR産物を鋳型DNAとして使用する場合

はじめて合成を確認するタンパク質の場合、用いる鋳型はPCR産物をおすすめします。タンパク質によっては、目的タンパク質の遺伝子の上流の配列に、タンパク質の合成量が影響されることがあります。また、遺伝子のN末端配列も同様に合成量に影響を及ぼすことがあるため、プライマーの設計で配列を最適化しやすいPCRによる鋳型DNAの調製をおすすめしています。

詳細につきましては、こちらをご覧ください。
「PCR産物を鋳型DNAとして使用する場合」

プラスミドを鋳型DNAとして使用する場合

T7 promoter、SD配列、T7 terminatorを含むベクターが使用できます。例えば、pET系(Merck社)、pQE系(Qiagen社) 等があります。但し、lac operator配列が存在すると、タンパク質合成量が減少する場合がありますので、lac operator配列を含まないベクター(pET17など)をおすすめします。

プラスミドの調製方法などに関する詳細につきましては、こちらをご覧ください。
「プラスミドを鋳型DNAとして使用する場合」

RNAを鋳型として使用する場合

mRNAからタンパク質を合成する場合、開始コドンの上流にSD配列を含むmRNAを使用してください。また、mRNAの添加濃度の目安は0.1~1 µMです。ご使用のmRNAの配列や純度等により最適濃度は異なりますので、はじめに、上記の濃度を参考に最適な添加濃度を決める条件検討をおすすめします。