Hisタグ付きタンパク質の精製方法

こちらは、2016年5月30日に公開された記事を再編集したものです。

PUREfrex®2.0 キットに、コントロールの鋳型 DNA として含まれている DHFR(分子量 18 kDa)に His タグを付与した鋳型 DNA を作製し、Ni アフィニティー樹脂で精製した結果を示しています。

1.用意したもの

使用したキット:PUREfrex®2.0(#PF201-0.25)
鋳型 DNA:DHFR-Hisx6 DNA
Ni アフィニティ―樹脂:Ni-Sepharose 6 FF (GE Healthcare)
Binding Buffer:50mM Tris-HCl (pH8), 500mM NaCl, 20 mM imidazole, 20mM Mg(OAc)2*
Wash Buffer:50 mM Tris-HCl (pH 8), 500 mM NaCl, 20 mM imidazole
Elution Buffer:50mM Tris-HCl (pH8), 500mM NaCl, 100mM imidazole

2.His タグつき DHFR の合成と精製

  1. 25 μL の反応液で 37℃、4 時間合成した。
  2. 合成反応液から 5 μL を抜き取った。(→ Syn)
  3. 残りの合成反応液(20 μL)に 80 μL の Binding Buffer を加えて希釈した。
    ※ Mg イオンを含まないバッファーで希釈した場合、リボソームが不安定化して、溶出画分にリボソームタンパク質が混入してきます。合成産物を精製する際は、Mg イオンを含むバッファーで合成反応液を希釈してください。
  4. 希釈した反応液に、Binding Buffer で平衡化した 10 µL の Ni-Sepharose 6 FF を添加し、4℃ で1 時間インキュベートした。
    ※ PUREfrex® で合成した His タグ融合タンパク質は、Ni アフィニティ樹脂に結合しにくい傾向があるため、多めの樹脂を使用してください。また、合成したタンパク質が、フロースルー画分に出てくる場合には、下部の「4.Ni 磁気ビーズを用いた精製」も参照ください。
  5. 短時間(5 秒程度)遠心し、樹脂を沈殿させて上清を回収した。(→ FT)
  6. 樹脂を、50 µL の Binding Buffer で 2 回洗浄した。(→ W1、W2)
  7. 樹脂を、50 µL の Wash Buffer で 3 回洗浄した。(→ W3、W4、W5)
  8. 樹脂に、50 µL の Elution Buffer を加えて DHFR-6xHis を溶出した。(→ E1、E2、E3)
  9. 10-20% のグラジエントゲルを用いて、SDS-PAGE を行った。
    (Syn/FT/W1/W2:合成反応液 1 µL 分、W3-5/E1-3:合成反応液 4 µL 分を泳動した。)
  10. 泳動後、ゲルを CBB で染色し、合成産物を確認した。

3.合成した DHFR-6xHis の精製結果

4.Ni 磁気ビーズを用いた精製

上記の Buffer 条件で Ni 磁気ビーズを用いた精製を行うと、His タグつきのタンパク質がフロースルー画分に出てきてしまうことがあります。このような場合、それぞれの Buffer に添加するイミダゾール等の濃度を最適化することで問題が解消されることがあります。

4-1.用意したもの

合成タンパク質:PUREfrex®2.0 で合成した His タグつきタンパク質 10 µM
Ni磁気ビーズ:PureProteome Nichel Magnetic Beads(MERCK)
Buffer:

Binding Buffer (A) (B)
Tris-HCl (pH 8) 50 mM 50 mM
NaCl 500 mM 300 mM
Imidazole 20 mM 5 mM
Mg (OAc)2 0 mM 20 mM
Tween 20 0.1% 0.1%
Washing Buffer (A) (B)
Tris-HCl (pH 8) 50 mM 50 mM
NaCl 500 mM 300 mM
Imidazole 20 mM 5 mM
Tween 20 0.1% 0.1%
Elution Buffer (A) (B)
Tris-HCl (pH 8) 50 mM 50 mM
NaCl 500 mM 500 mM
Imidazole 400 mM 400 mM
Tween 20 0.1% 0.1%

4-2.精製結果

Binding Buffer と Washing Buffer のイミダゾールなどの濃度を低くすると、His タグつきタンパク質の溶出効率が高くなりました。また、Mg イオンを Binding Buffer に添加した方が、溶出画分へのリボソームタンパク質の混入が抑えられていました。

今回は、Buffer に Tween 20 を添加していますが、こちらは、必ずしも必要ではありません。精製時の界面活性剤の効果につきましては、こちらのポスターをご覧ください。

活性型タンパク質合成のための、再構成型無細胞タンパク質合成系(PUREfrex)を用いたアプローチ

 

 

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